禅昌寺の御朱印|防長二州で托鉢が許された古刹|種田山頭火ゆかりのお寺(山口県山口市)

所在地山口県山口市下小鯖1170
宗 派曹洞宗
札 所中国三十地蔵尊霊場 第16番
由 緒1396年、大内氏10代当主・大内義弘の開基により創建。 創建当初は約80の末寺・小庵に囲まれ、1000人近い修行僧がいたそうです。そのため、西の高野と呼ばれていたそうです。創建以来、大内氏の帰依を得ていましたが、大内氏の滅亡後は毛利氏の帰依を受けて栄えたそうです。
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参道と手水舎

●説明板

別名・西の本山ならびに西の高野と呼ばれる禅昌寺に到着。

正式名称は亀岳林 法幢山 禅昌寺
きがくりん ほうどうざん ぜんしょうじと読みます。

禅昌寺は山口ICを出て国道262号線を防府方面に車で約10分のところにありました。


●参道

禅昌寺という寺号でもわかるように、このお寺さんは禅寺

かつては約80の末寺・小庵に囲まれ、1000人近い雲水(修行僧)がいた曹洞宗寺院なんだって。

ばっちりキマッた禅の空気にギュッと身が引き締まったひと時でしたよ。


●手水舎

●手水舎
・建立年不明
・1981年修復
・瓦葺 切妻造

そんなこんなで、手水舎でお清め。

手水舎の前にある石碑には、1980年に接触事故で倒壊。
翌年に修復したと書かれておりました。

龍の口から流れ出る手水は亀峰水と呼ばれる銘水なんだって。


さらに手水舎には

あかるく あたたかく 水のよいところ

こんなうまい水があふれている

というが書かれた2つの札がありました。

なんと、これは自由律俳句の俳人・種田山頭火さんの句だという。

どうやらこの禅昌寺は山頭火さんゆかりのお寺さんみたいです。


山頭火さんはこのお寺でたくさんの句を詠んでいるみたいですよ。

・法堂あけはなつ あけはなたれている

・水音しんじつおちつきました

・水音の たえずして み仏とあり

・風の中 声はりあげて 南無観世音

・われをしみじみ風が出てきて考えさせる

自由過ぎる作風が売りの山頭火さん。

これは俳句というより日記

いや、メモ

いや、つぶやき

これはツイッター系俳人ですね!


ちなみに山頭火さんは山口県防府市出身です。

防府市には山頭火さんのお墓がある護国寺がありましたよ。
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山門と放生池

●山門

●山門
・1396年建立
・1730年修築
・瓦葺 切妻造
・三間三戸 重層八脚門(?)

続いて登場するのは牌楼門のような摩訶不思議な山門

やたらと横長で重厚感と開放感のある門になっていました。

明らかに中華風、いわゆる禅宗様の影響を受けたような門でした。


なんとなく黄檗宗寺院にありそうな門ですが、黄檗宗のようなコテコテの中華風ではなく、どことなく和の風味も感じてしまう不思議な門でした。


山口市には楼拝殿造という山口地方独特の建築様式がありますが、もしかしたらこの山門も楼拝殿造と同じようなノリで造られたものかも知れませんねぇ。

ちなみに古熊神社の楼拝殿造は1373年建立。

この禅昌寺の山門は1396年建立。

時代も合いますしね!


そんなことより、山門の扁額には亀岳林と書かれておりました。

どうやらこの扁額は、徳川光圀さんが師事した明の高僧・心越禅師の書のようです。

かつて禅昌寺の左側にある亀尾峰という山にたくさんの雲水(修行僧)がいたんだって。

そのことから、このお寺は亀岳林(龜嶽林)と呼ばれるようになったそうですよ。

ちなみにこのお寺は、幕末期に禅昌寺の僧侶を中心とした亀峰隊の屯所になっています。


そんなこんなで、山門をくぐって境内へ。


山門には回廊が接続されていてこれぞ曹洞宗!ってな感じの伽藍配置となっておりました。

本堂へは回廊を通っていくルートと、回廊を通らずにそのまま直進するルートがありました。

どっちのパターンで参拝しよっか・・・と一瞬考えてしまいましたが、まずは御本尊さまにご挨拶をせねば。

ということで直進ルートで本堂へ向かいました。


●放生池

直進ルートには放生池がありました。

そして放生池には古そうな石橋が架かっていました。

残念ながら架橋年を確認することはできませんでしたが、なんとなく江戸期に架けられた橋かな?

とかなんとか、適当な推測をしつつ橋を渡る。
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本堂と開山堂と澄心池

●本堂


●本堂
・1850年再建
・瓦葺 入母屋造
・本尊 釈迦牟尼如来

そんなこんなで、本堂に到着。
堂内にあがせてもらい参拝しました。

御本尊は釈迦牟尼如来さん。

南無釈迦牟尼仏・・・
南無釈迦牟尼仏・・・
南無釈迦牟尼仏・・・


このお寺を創建したのは大内氏10代当主・大内義弘さん。

大内義弘さんはこのお寺に3000石を寄進しようとしたんだって。

しかし開山の慶屋定紹禅師が『安定は墜落のもと』といって断ったという!

その代わりに雲水(修行僧)が毎年春と秋に周防国長門国托鉢できるようにしてほしいと申し出てたそうです。

そんなこんなで、禅昌寺の雲水(修行僧)は周防国と長門国での托鉢が許可されたんだって。

なんとその托鉢は1869年の廃仏毀釈まで続いたという!

そんなこんなで幕末までの約500年間、雲水(修行僧)の浄行が続いたという!

そのこともあって、禅昌寺は周防国と長門国の大衆と深くつながり、その力に支えられてお寺が維持されてきたんだって。

なんだ、この男前なエピソードは!

3000石を断るなんて・・・私だったらニヤニヤしながら承諾しちゃう!


●開山堂

●開山堂
・建立年不明
・瓦葺 妻入り入母屋造

ちなみに本堂と開山堂は廊下で繋がっていました。

開山堂ということで慶屋定紹禅師がお祀りされているお堂です。

このお寺では、毎年7月に開山忌が行われるそうですよ。

ちなみに7月は慶屋定紹禅師の亡くなった月なんだって。


●澄心池

あと本堂の裏には澄心池という素敵な庭園がありました。

池泉鑑賞式庭園になっていたので、おそらく本堂もしくは書院から望むことを想定して造られたお庭だと思われます。


そんなこんなで、本堂前から境内を一望してみる。

なんと境内の堂宇には約90000枚が使われているそうですよ!

瓦瓦瓦・・・オットコ前でシビれる景観ですねぇ!


煙出しのある庫裏や袴腰の鐘楼
そして伽藍の右半分を囲む回廊も望むことができました。

ということで、回廊を歩いてみました。
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回廊・浴室・東司・鐘楼・庫裏など

●回廊

回廊には山門から順に浴室東司鐘楼庫裏食堂書院が建ち並んでいました。

宗派によって七堂伽藍の定義は違いますが、禅宗寺院では山門・仏殿(本堂)・法堂・僧堂・庫裏・浴室・東司を七堂伽藍とする場合が多いです。

この禅昌寺では法堂と僧堂を除く堂宇が揃っていました。

中国地方においてこのような伽藍を望めるのはなかなかレアですね!


●浴場(浴室)

浴場の前には延命地蔵さんが安置されていました。


禅宗寺院ではお風呂の神様を跋陀婆羅菩薩とすることがありますが、このお寺では延命地蔵が安置されているというね。

ちなみに跋陀婆羅菩薩と書いてばっだばらぼさつと読みます。


●東司

浴場の隣には東司もありました。

禅宗寺院では便所のことを東司と呼びます。
東司と書いてとうすと読みます。

禅宗寺院では、僧堂・浴室・東司のことを三黙道場といい、入浴や用を足すのも修行の1つとされています。

この三黙道場では、私語禁止なんですって!

ということで、連れションの際は要注意です。

A『トントンっ』
B『入ってまーす』
とかも言っちゃいけない!


●鐘楼

●鐘楼
・1698年建立
・瓦葺 入母屋造 袴腰

続いて、袴腰鐘楼が登場。

どうやらもともと吊るされていた梵鐘は戦時中の金属類回収令で供出されちゃったみたいです。

そんなこんなで、現在の梵鐘は1950年に鋳造されたものなんだって。

そして山頭火さんはこの梵鐘についても句を残しています。

松風に あけくれの 鐘ついて

555・・・本当に自由だなぁ。


ちなみに鐘楼の内部は掃除用具入れになっていました・・・むむむ。


●庫裏(庫裡)

●庫裏(庫裡)
・1698年建立
・瓦葺 煙出し付き切妻造

鐘楼の前には大きな庫裏がありました。

京都の名刹に負けないくらいの大きさでしたよ!


禅宗寺院では主として台所の役割を担う建物です。

そのため大屋根の上には台所から出た煙を逃す煙出しが付いていました。

火災除けのための波模様の棟瓦など、さりげないディテールにこだわりを感じる素敵な古建築でした。


●韋駄天像

庫裏と食堂の間には韋駄天さんが安置されていました。

ちなみに禅宗寺院では韋駄天さんは庫裏の守護神とされています。


●食堂と開梆

続いて、食堂が登場。

その名の通り食堂とは僧侶が食事をするためのお堂です。

食堂の前には禅宗のマストアイテムである開梆が吊るされていました。

開梆は魚梆もしくは魚板とも呼ばれ、腹を叩いて時刻を知らせるためのものです。

ちなみに開梆は木魚の原型といわれています。

口にくわえているは、人間の心に潜む貪・瞋・痴という煩悩のかたまりで、腹を叩くことによってこの煩悩の玉を吐き出させるという意味があります。

●貪瞋痴とは?
(とん) → 貪り(むさぼり)
(じん) → 怒り
(ち)  → 愚かさ


●書院・方丈

●書院・方丈
・江戸時代建立

続いて、書院方丈が登場。


唐破風の大玄関には大内氏の家紋・大内菱がありました。

さらに蟇股にも大内菱を確認することができました。

このお寺は創建以来、大内氏の帰依を得て栄えたそうです。

そして大内氏の滅亡後は毛利氏の帰依を受けたそうです。


そんなこんなで、本堂の蟇股では毛利氏の家紋・一文字三つ星を確認することができました。

ひとつのお寺で大内氏と毛利氏の家紋が見れるのってなかなか珍しいですね!


そんなこんなで、回廊散策は終了。

って・・・あれ?

僧堂(禅堂)がない!

曹洞宗といえば、壁に向かって座禅を組む、いわゆる・面壁座禅が有名。

ということで、曹洞宗にとって僧堂(禅堂)は重要な堂宇なんだけど・・・(-“-;) ??

どうやらこのお寺では毎月第1日曜日に本堂で早朝座禅会が行われているみたいです。

もしかしたら、本堂が僧堂(禅堂)の役割を果たしているのかも知れませんね。


ちなみに回廊は向かって右半分しかありませんでした。

おそらく昔は左半分にも回廊があったのでしょうが、何らかの理由で失ってしまったのだと思われます。
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観音堂(大慈殿)

●観音堂(大慈殿)

●観音堂(大慈殿)
・建立年不明
・銅板葺 入母屋造

そんなこんなで、かつては回廊があったと思われる左半分に足を運びました。



こちらは有名な曹洞宗寺院の伽藍配置図です。


そしてこちらは禅昌寺の伽藍配置です。

これら名刹の伽藍配置を見てもわかるように、この観音堂がある位置には僧堂(禅堂)が建つお寺さんが多いです。

そんなこんなで、もしかしたら昔はここに僧堂(禅堂)があったのかも知れませんね(推測)


ちなみに観音堂内には1884~1978年作の聖観音さんが安置されてるんだって。

通常、観音さんのことを殿と呼びますが、この観音堂は殿!

御本尊が観音さんの場合、南無大慈大悲観世音菩薩とお唱えしますが、大悲ではなく大慈の方を採用したお堂とはね!

ちなみにこのお寺では御朱印をお願いすると御本尊の釈迦牟尼如来ではなく大慈殿と書かれることがあるみたいです。

そのことからもわかるように、もしかしたらこの観音堂は僧堂(禅堂)よりも重要視されているお堂なのかも知れませんね。

そんなこんなで参拝終了・・・

と言いたいところですが、境内はまだまだ続きます!

どうやらこのお寺には奥の院があるみたいです。

賽の河原・中の院(仏像鑑賞)・奥の院など

●奥の院 参道

奥の院に続く参道には水子地蔵さんが並んでいました。

ここから一気に空気感が変わるのがわかりましたよ。


●賽の河原

そして賽の河原がありました。

南無南無南無・・・


●古い墓石群


賽の河原を抜けると古い墓石がたくさん現れました。

結構な数の墓石群でした。


●中の院 阿弥陀堂

●中の院 阿弥陀堂
・建立年不明
・銅板葺 宝形造

そうこうしていると中の院の阿弥陀堂に到着。


●阿弥陀堂
・左 → 地蔵菩薩像
・中 → 阿弥陀如来像
・右 → 聖観音菩薩像

阿弥陀堂内には阿弥陀如来さんを中心とした三尊像が安置されていました。

なんと、3体とも平安時代末期作の古仏だという!

まさか仏像鑑賞ができるとはね!

いやはや、素敵な時間を過ごすことができました。


●阿弥陀如来坐像
・平安時代末期作
・像高 144cm
・檜材 寄木造
・山口市指定有形文化財

●聖観世音菩薩立像
・平安時代末期作
・像高 147cm
・檜材 一木造
・山口市指定有形文化財

●地蔵菩薩立像
・平安時代末期作
・像高 146cm
・檜材 一木造
・山口市指定有形文化財


●奥の院 禅定台

●奥の院 禅定台
・建立年不明
・瓦葺 宝形造

そんなこんなで、奥の院に到着。

奥の院は中の院から徒歩すぐのところにありました。


なんと台座の下には座禅をしたまま入滅した慶屋定紹禅師がそのまま埋葬されてるんだって!

そんなこんなで、この奥の院は慶屋定紹禅師のお墓という意味を持つお堂なんですね。

ということで、堂内には慶屋定紹禅師の墓石がありました。

そして上にはチラ見する慶屋定紹禅師が・・・怖いよぅ~。


そんなこんなで、参拝終了。

いやはや、禅の空気をたくさん感じれる素敵なお寺さんでした。

御朱印情報

●御朱印の種類
・大慈殿の御朱印
・中国三十地蔵尊霊場の御朱印

●御朱印の受付時間
・不明

●御朱印の料金
・各300円

●期間限定・特別御朱印
・なし

●オリジナル御朱印帳
・なし

・2015年9月26日 参拝
・2022年8月 更新
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参拝情報とアクセス

●開門時間
・不明

●拝観料
・無料

●最寄りの駅
・JR山口駅から車で15分
・JR防府駅から車で15分

●最寄りのバス停
・中国JRバス
 禅昌寺前 バス停で下車 徒歩5分

●最寄りのIC
・中国自動車道
 山口ICから車で10分

●駐車場
・無料の専用駐車場あり

禅昌寺の地図

 

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